安田顕の若手時代を語る上で絶対に外せないのが、HTB(北海道テレビ)の看板深夜番組『水曜どうでしょう』での活躍です。当時、北海道内ですでに頭角を現しつつあった大泉洋のバーターのような形で、HTBのマスコットキャラクター「onちゃん」のスーツアクター(中の人)として抜擢されました。
本来、着ぐるみキャラクターは愛らしく無害に振る舞うのが鉄則です。しかし安田顕が入ったonちゃんは全く異なりました。番組内で大泉洋から理不尽なプロレス技をかけられてボコボコにされ、スキー場で豪快に転倒し、休憩中には着ぐるみの頭部を脱ぎ捨てて平然とタバコを燻らす——。そのシュールかつ哀愁漂う姿は「黄色い悪魔」「安田onちゃん」と呼ばれ、伝説的な人気を獲得しました。
さらに、鈴井貴之との「対決列島」で見せた牛乳の早飲みでは、口から勢いよく牛乳を吹き出す伝説の「リバース事件」を引き起こすなど、端整な顔立ちの裏に隠された剥き出しの身体性と芸人顔負けの捨て身の覚悟を披露しました。顔が見えない着ぐるみの中にいながら、立ち姿やリアクションのキレだけで視聴者を爆笑させる——この過酷な現場で培われた肉体言語と間合いの感覚こそが、後の怪演俳優・安田顕の強固な土台となったのです。