日本放送協会 (NHK) の看板番組『NHK紅白歌合戦』において、石川さゆりが披露する『天城越え』は、毎年多くの視聴者を魅了する冬の風物詩となっている。紅組の大トリや重要な局面で幾度となく歌唱されてきたが、そのたびに真に迫るパフォーマンスで観客を圧倒してきた。
石川さゆりの歌唱力は、単に音程を正確にたどるものではない。一音一音に込められた怨念とも慈愛ともとれる複雑なニュアンス、視線一つで表現されるドラマ性は、演歌というジャンルを超えた舞台芸術の域に達している。年齢と経験を重ねるごとに凄みを増す彼女のボーカルは、歌詞に込められた「究極の情念」に新たな命を注ぎ込み続けている。