武石中学時代、県大会決勝で見せた土壇場からの逆転劇。その立役者となった三井寿は、誰もが将来を期待する怪物プレイヤーだった。彼を支えたのは、名将・安西光義が放った「最後まであきらめちゃいかん」という伝説の言葉だ。恩師の存在に引き寄せられるように湘北高校バスケットボール部へと進学した三井だったが、待っていたのは酷な試練だった。
練習中の左膝負傷。不完全なままコートに戻ろうとして再発した怪我は、彼のプライドを根底から打ち砕いた。同期の赤木剛憲が着実に頭角を現す傍らで、自身はコートに立つことすら許されない。挫折から生まれた焦燥感と嫉妬、そして自暴自棄。その心の病みが最高潮に達した結果が、バスケット部を破壊しようと画策する不良グループへの傾倒だった。「中学MVP」という眩しすぎる過去があればこそ、惨めな現在から目を背けるために彼は髪を伸ばし、かつての自分を覆い隠す必要があったのだ。