ボロネーゼの正式名称はイタリア語で「ラグー・アッラ・ボロニェーゼ(Ragù alla Bolognese)」と呼びます。「ラグー(Ragù)」とはフランス語の「ラグラ(Ragoûter=食欲をそそる、煮込む)」を語源とする煮込み料理全般を指す言葉であり、ボローニャ風の肉の煮込みソースという意味です。
美食の都として名高いイタリア北部エミリア=ロマーニャ州の州都ボローニャでは、古くから裕福な貴族階級の祝宴料理として発展してきました。フランス料理の高度な調理技術が流入し、上質な肉を細かく刻んで香味野菜やワインとともに長時間煮込む手法が確立されたと伝えられています。
世界的な知名度が高まるにつれ、各地で本来の形からかけ離れたレシピが乱立したことを危惧したイタリア料理アカデミー(Accademia Italiana della Cucina)は、1982年10月にボローニャ商工会議所へ「真正なラグー・アッラ・ボロニェーゼ」の公式レシピを公証登録しました。
さらに時代の変化に合わせ、アカデミーは2023年4月に約40年ぶりとなる公式レシピの改定を行いました。新基準で公認された主要な構成要素は以下の通りです。
- 肉の部位:粗挽きの牛肩肉(またはブリスケなどの赤身肉)。風味を補うために豚のパンチェッタ(バラ肉の塩漬け)を併用。
- ソフリット:玉ねぎ、セロリ、にんじんを同量ずつ極小のみじん切りにしてじっくり炒めた香味ベース。
- 水分と旨味:辛口の赤ワインまたは白ワイン、良質なブロード(肉の出汁)、牛乳、少量のトマトペースト(抽出物)。
- 厳禁事項:過度なトマトピューレやトマト水煮缶の使用、にんにくやローリエ以外の強い香辛料の乱用。
公式の定義が示す通り、本場のボロネーゼにおいてトマトはあくまで「肉の旨味を支える隠し味」に過ぎず、ベースは完全に赤ワインとブロードによる肉の煮込み料理であることが分かります。