声優ファンやアニメファンにとって、燃堂力のキャスティング発表は当時、業界全体に激震を走らせるサプライズでした。『黒執事』のセバスチャン・ミカエリス役や『ジョジョの奇妙な冒険』の空条承太郎役、『進撃の巨人』のエルヴィン・スミス役など、スマートで威厳ある低音ボイスを代名詞としていた小野大輔が、知能指数ゼロの怪物を演じること自体が前代未聞のキャスティングだったからです。
関係者の証言や公式イベントのトークによると、この配役の根底には制作陣が仕掛けた「究極のギャップ構造」がありました。燃堂力はテレパシー能力を持つ斉木楠雄が「何も考えていないため思考が読めない」という唯一無二の恐るべき特性を持っています。その底知れぬアホさを表現するためには、単に下品で粗野な声をあてるのではなく、「無駄に響きの良い美声で一切中身のない言葉を放つ」という高度なシュールさが必要不可欠でした。
小野大輔本人は当時のインタビューで「オーディションの話をいただいた際、まさか自分が燃堂役に決まるとは思っていなかった。だが演じるうちに、彼の裏表のない純粋さと圧倒的な人間的魅力に引き込まれていった」と述懐しています。二枚目俳優としてのプライドを完全に脱ぎ捨て、全力で「バカの純粋さ」を追求した小野のプロフェッショナリズムが、燃堂力をアニメ史に残る屈指の人気キャラクターへと昇華させました。