時計の針を十数年巻き戻してみよう。球界最高の捕手として圧倒的な存在感を放っていた読売ジャイアンツの主砲と、気鋭のグラビアアイドルとしてメディアに引く手あまただったタレントのスキャンダル。週刊誌のスクープが放った激震は、瞬く間に全国の紙面やワイドショーを駆け巡った。連日のように尾ヒレがついた情報が飛び交い、真偽の定かでない噂話が市中に溢れかえったのだ。
当事者たちが沈黙を守るなか、噂だけがひとり歩きした。掲示板やSNSの黎明期において、この騒動は格好の「無料コンテンツ」として消費されていく。事実と誇張、それに第三者の妄想が不気味に混ざり合い、整理されないまま都市伝説化していくプロセス。いま思えば、あれこそがネット社会の集団狂乱の原点だったのかもしれない。