医療現場のカンファレンスや看護記録において、今なお根強く残る誤解がいくつか存在します。これらの認識のズレを正すことは、患者の安全管理における重要なステップです。
誤解1:「SpO2が100%だから、分時換気量も問題ない」
これは臨床現場で最も頻繁に遭遇する危険な思い込みです。パルスオキシメーターが示すSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は、あくまで「酸素化(Oxygenation)」の指標であり、「換気(Ventilation=CO2の排出)」の指標ではありません。酸素投与を行っている患者であれば、分時換気量が激減してPaCO2が80mmHgを超えるような重篤なCO2ナルコーシスに陥っていても、SpO2は98〜100%を維持しているケースが多々あります。「換気の評価は、SpO2ではなく呼吸数・換気量・PaCO2で行う」という大原則を徹底しなければなりません。
誤解2:「呼吸数が正常範囲(16回/分)だから安心である」
呼吸数単体での判断も極めて危険です。1回換気量がわずか150mL(死腔量と同等)に低下していれば、呼吸数が16回であっても肺胞換気量はゼロに近づきます。必ず1回換気量と呼吸数の計算を頭の中で掛け合わせ、分時換気量と呼吸パターンの双対性で捉える必要があります。