バスクチーズケーキのルーツは、世界屈指の「美食の街」として知られるスペイン北部・バスク地方の港町サンセバスチャン(San Sebastián)にあります。その旧市街の一角に店を構える老舗バル「ラ・ヴィーニャ(La Viña)」が発祥の地です。
1990年頃、ラ・ヴィーニャの店主であるサンティアゴ・リベラ(Santiago Rivera)氏が、「自慢のバルに並ぶ料理に負けない、シンプルで力強いオリジナルのデザートを作りたい」と試行錯誤を重ねて開発したのが始まりでした。当時、厨房のオーブンで型にオーブンペーパーを無造作に敷き詰め、高温で豪快に焼き上げられたチーズケーキは、現地の常連客の間でたちまち評判を呼びました。
興味深いことに、現地スペインでは「バスクチーズケーキ」とは呼ばれていません。スペイン語でシンプルに「Tarta de Queso(タルタ・デ・ケソ=チーズタルト/チーズケーキ)」と呼ばれており、カウンターに積み上げられたホールケーキから切り分けられ、バル文化に根差したおつまみ感覚で楽しまれています。微発泡の地ワイン「チャコリ」や辛口のシェリー酒、フルーティーな赤ワインとともに夜更けまで味わうのが、本場サンセバスチャンの日常的なスタイルです。
このローカルな逸品が世界的な注目を浴びたきっかけは、各国のトップシェフや著名フードジャーナリストたちがサンセバスチャンを訪れ、その衝撃的な味を自国へ持ち帰ったことでした。日本では2018年頃から白金高輪の専門店などが火付け役となり、翌年には全国的なムーヴメントへと急速に拡大していきました。