多くの読者が抱く「いつも呆れている」という印象とは異なり、原作全編を通じて承太郎が口にする「やれやれだぜ」は、シーンによってまったく異なる心理状態を映し出しています。大別すると以下の4つのフェーズに分類されます。
第1に「理不尽な事態に対する呆れ」です。敵スタンド使いの卑劣な罠や、ジョセフ・ジョースターやポルナレフら仲間たちのドタバタ劇に直面した際、ツッコミのニュアンスを含んで発せられます。第2に「強敵を打ち倒した瞬間の覚悟と威圧」です。相手の策を完膚なきまでに打ち破り、フィニッシュの連打(オラオララッシュ)へ移行する直前の静かな宣告として響きます。第3に「死線をくぐり抜けた後の安堵」であり、張り詰めた極限状態から生還した瞬間、深く息を吐き出すように呟かれます。そして第4が、第4部や第6部で見せた「次世代や仲間を陰から見守る慈愛」の表現です。
このように、「やれやれだぜ」は承太郎にとっての呼吸そのものであり、激情を胸の奥深くに押し込め、冷静沈着な勝負師へと意識を切り替えるスイッチの役割を果たしています。動的なアクションを象徴する叫びが「オラオラ」であるならば、静的な精神的支柱を成すのが「やれやれだぜ」であり、この静と動のコントラストこそがキャラクターの完成度を高めています。