皮膚科学および施術技法の観点から検証すると、「刺青」と「タトゥー」は肌に針で傷をつけ、そこに色素を定着させるという物理的な基本構造は同一です。人間の皮膚は外側から表皮(厚さ約0.1〜0.2mm)、その下に真皮(厚さ約1〜2mm)、さらにその下に皮下組織が広がっています。新陳代謝(ターンオーバー)によって数週間で剥がれ落ちる表皮ではなく、代謝の極めて遅い真皮層に色素を留めることで、絵柄が半永久的に残ります。
しかし、プロの彫師や皮膚科医の知見を総合すると、針を刺し入れる「深さの狙い」と「使用する色素(インク)」には歴然とした差異がみられます。
伝統的な日本の刺青、特に「手彫り」と呼ばれる技法では、針を固定した棒を用いて職人の手加減でリズミカルに皮膚へ刺入します。この際、色素は真皮の中層から深層(約1.5〜2.0mm前後)にかけてしっかりと沈着させられます。使用されるのは主に伝統的な「和墨(松煙墨や油煙墨)」であり、粒子が均一ではない墨汁が皮膚深層で光を散乱させることによって、年月とともに独特の深みを持つ青藍色(いわゆる藍色・青墨色)へと変化していきます。「刺青」という漢字表記が生まれた背景にも、墨を入れた皮膚が青く浮かび上がる視覚的現象が関係しています。
一方、現代のタトゥーは主に毎分千回以上往復運動する電動マシンを使用し、真皮の浅層から中層(約1.0〜1.5mm前後)へ均一に色素を配置していきます。色素にはシアン、マゼンタ、イエローなどの合成有機顔料や無機顔料を用いた多色展開の「タトゥー専用インク」が用いられ、原色に近い鮮烈なグラデーションや微細なラインを表現することに長けています。
さらに「痛み」の質にも違いがあります。手彫りの刺青は「皮膚の奥を小突き回されるような重い鈍痛」と表現されることが多く、マシン彫りのタトゥーは「高速で引っ掻かれ、皮膚が熱を帯びて焼けるような鋭い痛み」と評されます。ただし痛みの強弱は技法以上に、肋骨の上や足首、関節部、首筋といった「皮膚が薄く骨に近い部位」であるかどうかに強く左右されます。