NHKの中継を巡っては、視聴者の間でいくつかの誤解や都市伝説が長年囁かれてきました。その最たるものが、「NHKは全国民から受信料を集めているのだから、全球団の全試合を放送すべきだ」という意見です。しかし、そこにはプロ野球界特有の極めて複雑なNHKプロ野球 放映権事情が横たわっています。
プロ野球の放映権は、サッカーのJリーグのようにリーグが一括管理しているわけではなく、各球団が個別に権利を保有・販売しています。特に読売ジャイアンツの主催試合における日本テレビ、阪神タイガース主催試合における在阪準キー局、中日ドラゴンズ主催試合におけるCBCテレビや東海テレビなど、各球団と特定の民間放送局の間には半世紀以上にわたる強固な歴史的資本関係が存在します。
NHKがいくら中継を希望しても、親会社や系列局の優先交渉権の壁を越えて放映権を獲得することは容易ではありません。結果として、NHKの放送カードは各球団のホームゲームがバランスよく配分される形をとっており、特定球団の主催試合ばかりを連日放送することは構造上不可能なのです。
もう一つの盲点は、インターネット配信における権利の壁です。地上波総合テレビで放送されている試合は前述の通りNHKプラスで同時配信されますが、主催球団との放映権契約の内容によっては、デジタル配信の権利(公衆送信権)がテレビ放送の権利と切り離されている事例があります。そのため、「テレビでは映っているのに、NHKプラスのアプリを開いたら権利上の理由で配信が蓋止め(休止画面)されていた」という事象が稀に発生します。ネット視聴を前提に観戦計画を立てる際は、この契約上の差異を事前に頭に入れておく必要があります。