この店を語る上で絶対に外せないのが、スペイン料理の頂点を決める「スエカ国際パエリアコンクール」での輝かしい実績だ。バレンシアの歴史あるコンテストにおいて、門外漢と見なされていた日本人シェフが本場の巨匠たちを打ち破り、世界一の栄冠を手にした瞬間は、ヨーロッパの料理界に激震を走らせた。
巨大なパエリア鍋の底に薄く均一に広げられた米粒。薪の強火と熾火をミリ単位で操り、完璧な「ソカラ(おこげ)」を創り出す。カリッとした食感の奥からあふれ出す濃厚な出汁の旨味は、一度口にすれば記憶に焼き付いて離れない。現地審査員をして「バレンシア人以上にバレンシアの心を理解している」と言わしめたその職人技は、今も毎夜、川越の厨房で寸分違わず再現されている。