OECD(経済協力開発機構)加盟国をはじめとする世界の主要国の約9割は、すでに18歳以下の選挙権を採用しています。オーストリアやアルゼンチンのように16歳から選挙権を付与している国も存在します。しかし、日本と海外先進国との間には、制度の有無以上に「主権者を育てる土壌」に決定的な格差が存在します。
例えばスウェーデンでは、国政選挙の際に各政党の青年部代表が全国の高等学校を訪れ、生徒たちの前で白熱したディベートを展開します。学校内に各政党のブースが設置され、生徒は授業の一環として各党の政策の違いを徹底的に質問し、吟味します。そこには「政治的中立を保つために政治を遠ざける」という発想はなく、「多様な政治的選択肢をぶつけ合わせることで中立性を担保する」という哲学が貫かれています。
ドイツにおいても、1976年に策定された「ボイテルスバッハ・コンセンサス」に基づき、(1)学習者に特定の意見を圧倒して押し付けてはならない、(2)学問・政治において議論の余地がある問題は授業でも議論があるものとして扱わなければならない、(3)生徒が自分の利害関係を把握し判断できるようにしなければならない、という明確な原則が共有されています。
こうした国際基準と比較すると、日本の18歳選挙権は「箱(投票権)だけを与えて、中身(政治的熟議の場)の提供を恐れている」という批判を免れません。この落差を埋めることこそが、次なる10年に向けた最大の課題です。
【プロの結論】政治的自己効力感を育む家庭環境と社会システムの処方箋
政治学および社会学の知見に基づけば、若者の投票行動を左右する決定打は「自分の行動によって政治や社会を変えられる」という政治的自己効力感(Political Efficacy)の有無に帰着します。若者が権利を十全に活かすためには、以下の条件を整備することが急務です。
第一に、家庭内での「対話型コミュニケーション」の確立です。親の意見を押し付けるのではなく、時事ニュースに対して「あなたはどう感じるか」を対等に問いかける家庭環境こそが、自律的な思考の揺籃となります。親の過干渉や政治信条の強制は、若者の政治的無力感や反発を招くだけです。
第二に、デジタルを活用した主権者行使の障壁撤廃です。進学や就職で移動した若者が住民票を移していなくとも、マイナンバーカードを用いたオンライン投票や特設の期日前投票所を利用できる仕組みが導入されれば、「19歳の崖」は大幅に緩和されます。制度の側が若者のライフスタイルに歩み寄る必要があります。