被害の拡大と並行して、世論の怒りを決定的なものにしたのが雪印乳業トップ層の危機管理対応でした。連日の会見で情報開示が遅れ、原因究明に対する後ろ向きな姿勢が批判を浴びる中、2000年7月4日深夜に象徴的な場面が訪れました。
当時の石川哲郎社長がエレベーター前で詰め寄る報道陣に対し、「わたしは寝ていないんだよ!」と声を荒らげた瞬間です。この発言はテレビのニュース速報で全国に放映され、「被害者が苦しんでいる最中に、自らの睡眠不足を理由に説明を放棄した」として猛烈なバッシングを巻き起こしました。
当時の特番インタビューや関係者の証言によると、経営陣は社内の保身やブランド毀損の回避を最優先し、生活者視点を完全に見失っていました。この心理的乖離こそが、日本の大企業病とも言える「内向きの論理」の極致でした。石川社長は直後に辞任へ追い込まれ、トップ企業の信用は一夜にして地に堕ちました。