広島駅発の移動において、ネット上で「広島の二大世界遺産を一気に巡る裏技」として拡散されているのが、平和記念公園(原爆ドームそば・元安橋桟橋)と宮島(宮島第3桟橋)を直接結ぶ「世界遺産航路(アクアネット広島)」です。
この航路は、広島駅から広電や路線バスで原爆ドームへ向かい、平和記念公園を見学した足でそのまま船に乗り込み、約45分で直接宮島へ海路移動できるという極めてスマートな動線を描けます。宮島口での乗り換えが一切発生しないため、効率的な周遊を狙う層には絶大な人気を誇ります。
しかし、ここにはWeb検索だけでは見落としがちな「潮位(潮の干満)の罠」が存在します。運航区間の元安川には複数の低い橋が架かっており、大潮などの満潮時には船が橋の下を通過できず欠航、あるいは河川内のみ運休して瀬戸内シーパセオ等への振替になるケースがあります。逆に極端な干潮時にも川底が浅くなり船が出せない事態が発生します。さらに料金は片道2,200円(+訪問税100円)と陸路に比べて割高です。天候や潮位による運航可否を事前確認せず旅程に組み込むのは危険です。
さらに深刻な盲点が、「厳島神社の潮汐表(満潮・干潮時間)」と移動スケジュールの連動です。旅行者が思い描く「海に浮かぶ幻想的な大鳥居」は潮位がおおむね250cm以上の満潮時にしか現れません。一方、「大鳥居の足元まで歩いて渡る」体験ができるのは、潮位が100cm以下の干潮時に限られます。
潮の干満は約6時間周期で入れ替わります。広島駅を出発する時間を決める前に、宮島観光協会の公式サイト等で当日の潮汐表を確認し、「どちらの光景を見たいのか」から逆算して移動スケジュールを組まなければ、現地に到着してから「海が完全に干上がっていた」「足元まで行けず遠くから眺めるだけになった」という後悔を抱くことになります。