手のひらや足の裏、爪といった四肢の末端に発生するほくろに対して、皮膚科医が慎重な姿勢を崩さないのには明確な医学的根拠が存在します。日本を含む東アジア人において、皮膚がんの中でも極めて悪性度が高いメラノーマは、手足の末端に生じる「末端黒子型(まったんこくしがた)メラノーマ」の割合が全体の約4割を占めるためです。
臨床の最前線では、良性の母斑(通常のほくろ)とメラノーマを肉眼および拡大鏡(ダーモスコピー)で鑑別する際、国際的な診断指標である「ABCDEルール」が用いられます。自己診断で安心しきってしまう前に、以下の客観的指標と手元のほくろを照合してください。
皮膚科学会の診療データによると、成人の手掌における良性ほくろの多くは、皮膚の表面にある皮溝(溝の部分)に沿って規則的に色素が沈着する「皮溝並行パターン」を示します。これに対し、悪性黒色腫の初期段階では皮丘(盛り上がった畝の部分)に色素が優位に沈着する「皮丘並行パターン」が観察されます。この微細な差は肉眼では判別不可能であり、専用の光学機器であるダーモスコピーを用いた専門医の診察を受けて初めて確定診断に至ります。