飛ぶ鳥を落とす勢いだった名門が、なぜ破綻の淵へと追い込まれたのか。芳賀書店倒産と民事再生の経緯を検証すると、単一の経営ミスではなく、出版流通と情報インフラの急速な変化が複合的に絡み合っていた事実が浮かび上がります。
経営難の兆候が表面化したのは2000年代初頭でした。当時、負債総額約20億円を抱えて東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請。最大の芳賀書店閉店の理由は、以下の3点に集約されます。
第1に、1990年代後半から始まったインターネットの普及です。これまで芳賀書店でしか入手できなかった映画の公開データ、キャスト情報、海外のゴシップやスチール画像が、Web検索で瞬時に手に入る環境が整いました。情報そのものの希少価値が急速に失われたのです。
第2に、成人向けコンテンツおよびグラビア市場の構造変化です。芳賀書店の屋台骨を支えていた高価格帯の写真集や雑誌の売上が、アダルトビデオの低価格化やインターネット動画配信の台頭によって激減。神保町やすずらん通りの路面店、そして後述する秋葉原店を含め、高額なテナント賃料を維持できる利益率を確保できなくなりました。
第3に、新古書店チェーンの台頭と取次システムの機能不全です。専門書・マニア向け書籍の返品率上昇とキャッシュフローの悪化が追い討ちをかけ、再生ファンドやスポンサー企業による事業譲渡を模索したものの、往年の規模を維持することは不可能でした。結果として、2010年代にかけて神保町本店をはじめとする旗艦店が相次いで姿を消すこととなりました。