物語の根底にあるのは、フランス・パリの二つ星レストラン「エスコフィユ」で起きた、日仏合同首脳会談におけるアレルギー事故です。要人に提供された肉料理のソースにアレルギー物質であるナッツ類(ピーナッツオイル)が混入し、被害者がアナフィラキシーショックで倒れるという国際的スキャンダルへと発展しました。店は解体され、尾花夏樹は「日本の恥」と激しいバッシングを浴びることになります。
この事件における「犯行理由」について、放送初期のネット上では「何者かによる意図的なサボタージュ」「ライバル店のスパイ行為」など様々な憶測が飛び交いました。しかし、明らかになった真相は、極めて悲劇的な厨房内の過失とパニックでした。
当時、エスコフィユの厨房で下働きに近い過酷なプレッシャーに晒されていた平古祥平は、仕込みの最中に誤ってピーナッツオイルの瓶を手に取ってしまいました。本来使用すべきオイルと混同し、そのまま調理に使用してしまったのです。さらに決定打となったのは、アレルギー発症の一報が入った瞬間の祥平の心理状態でした。名声あるトップシェフたちの怒号が飛び交う極限状態のなか、祥平は自分が原因であると気づきながらも、恐怖のあまり名乗り出ることができませんでした。
尾花は現場に残された痕跡から即座に祥平のミスを察知し、若き弟子を守るためにあえて自らが責任を背負い、調査に訪れたフランスの役人を殴倒するという暴挙に出て事態を泥沼化させました。悪意による犯行ではなく、若さゆえの過失と恐怖、そして師匠による不器用すぎる自己犠牲の庇護が、3年もの長きにわたる空白と歪みを生み出す引き金となったのです。