熱力学の原理は至ってシンプルだ。高圧下で水として存在する高温ドレンが、圧力の低い容器内へ流入すると、保持していた熱量の一部が水を瞬時に蒸発させる。この現象で生まれるのがフラッシュ蒸気である。容器としてのフラッシュタンクは、この自己蒸発作用を安全かつ安定して発生させ、気体と液体をきれいに分離する役割を担う。
近代産業の曙光期、ジェームズ・ワットが蒸気機関の熱効率改善に心血を注いだ時代から、蒸気工学の核心は「潜熱の回収」に他ならなかった。タンクトップから排出される二次蒸気は、低圧の暖房設備や殺菌工程、あるいは純粋なプロセス加熱へと回される。一方、底部に残った減圧後のドレンは給水タンクへと送られ、再利用のサイクルを完成させる。
構造的には、内部に特殊なデミスターやバッフルプレートを備え、水滴の同伴を極力防ぐ構造が一般的だ。設置にあたっては法律上の区分にも注意が必要で、使用圧力や容量に応じて圧力容器としての規格を満たさなければならない。日本では構造安全性を保証するため、JIS B 8265(圧力容器の構造―一般事項)などの厳格な基準に準拠した設計・製造が義務付けられている。