一歩足を踏み入れると、そこには戦国末期の軍事防衛思想が凝縮された空間が広がっています。建物の構造は4階7層・23部屋・29階段に及び、内部を把握していない侵入者は確実に迷走する設計です。
寺内に施された代表的なからくり仕掛けには、侵入した敵を確実に無力化するための工夫が凝らされています。
- 落とし穴になる賽銭箱:本堂正面の賽銭箱は、床板を外すと深さ約3メートルの落とし穴が現れ、正面から突入してきた敵兵をそのまま地下へ落とすトラップになっています。
- 明かり取り階段(影石):階段の蹴込み部分に障子を組み込み、下階の明かりを利用して侵入者の足元を照らす構造。内部からは敵の足影が見えるため、槍で下から突く迎撃が可能でした。
- 隠し引き階段:普段は板戸に見える壁を操作すると、上の階へ通じる階段が瞬時に出現・格納できる仕組みです。敵の退路を断ち、味方の逃げ道を確保する役割を果たしました。
- 物見台と太鼓櫓:屋根の最上部には周囲を360度見渡せる物見台が設けられ、有事の際には太鼓を打ち鳴らして城内や城下町へ警報を発する通信塔の役割を担っていました。
- 大井戸と金沢城への抜け穴伝説:境内にある大井戸は、底近くに横穴が掘られており「金沢城の本丸まで通じる秘密の抜け穴だった」という伝説が語り継がれています。水深や地質調査により実戦用の避難経路、あるいは水源確保の要所として機能していたと考えられています。