ベリーショートツーブロックに挑戦した男性が最も頻繁に直面するトラブルが、サイドの毛が横に向かってピンピンと跳ね上がり、ヘルメットをかぶったような不自然なフォルムになってしまう現象です。ネットの掲示板や知恵袋でも「切った翌日からサイドが浮いてセットができない」という悲痛な相談が絶えません。このベリーショートツーブロックでセットなしのときに浮く原因は、本人のスタイリング技術の不足ではなく、カット設計の段階における「物理的質量の不足」と「日本人の骨格特性」にあります。
一般的なミディアムやショートのツーブロックであれば、刈り上げた部分の上に覆いかぶさる髪に適度な長さと重さがあるため、毛髪の重力によって自然にサイドが収まります。しかし、トップを短く切り詰めるベリーショートの場合、被さる毛の長さが数センチ足らずとなり、髪自体の重さ(自重)で生え癖を抑え込むことが物理的に不可能になります。特に日本人に多い「直毛かつ剛毛」の髪質では、毛根から毛先に向かって髪が外側へ向かって直立しようとする反発力が勝ってしまい、結果として毛先が真横へ浮き上がってしまうのです。
さらに問題を複雑にしているのが、側頭部の上部が張り出している「ハチ張り」と呼ばれる頭蓋骨の形状です。刈り上げの終着点(ツーブロックの境目)をハチの最も出っ張っている骨格ラインより下に設定してしまうと、短い上側の髪がハチの骨に押し出される形となり、真横へ向かって大きく跳ね上がります。都内有名メンズサロンのトップスタイリストは、現場の実情を次のように指摘します。
「お客様が『とにかく短くしてスッキリさせたい』とおっしゃるまま、ハチの下途中でバリカンを止め、その上に短い毛を乗せてしまうと、確実に浮きます。ベリーショートにおけるツーブロックは、一般的なショートとは全く別の物理法則で設計しなければなりません。浮かないようにするためには、刈り上げのグラデーションをハチの上まで滑らかに繋げるフェードの技法を取り入れるか、被せる毛の毛量調整を根元から計算して間引く作業が絶対に欠かせないのです」
つまり、単に「サイドを刈り上げて上を短くする」という二次元的な解釈でハサミを入れることこそが、失敗を引き起こす最大の元凶となっています。