ヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟は、ドイツ各地に伝わる民間伝承や口承文芸を収集し、『子どもと家庭の童話集』としてまとめました。しかし、1812年に出版された初版は評判を呼んだ一方で、「内容がグロテスクで残酷すぎる」「子どもに読ませるには教育上不適切だ」という猛烈な批判にさらされることになります。
そこで弟のヴィルヘルム・グリムは、版を重ねるごとに大規模なリライトと道徳的推敲を施していきました。このテキストの変遷をデータと文献記録から追うと、物語がどのように「純化」されていったのかが克明に判明します。
文芸研究者の調査によると、グリム兄弟は第1版から最終の第7版に至る約45年間の間に、計6回もの全面改訂を実施しています。初版の持つ生々しい農村のリアリズムは削ぎ落とされ、キリスト教的敬虔さと近代的な家族愛を称揚する物語へと入念に手直しされていったのです。