和菓子ファンの間でしばしば議論されるのが、「三原堂は人形町以外にもあるが、何が違うのか」という疑問です。実は東京には「人形町三原堂(三原堂本店)」「池袋三原堂」「本郷三原堂」などが存在し、それぞれが独自の歴史を歩んでいます。
総本山といえるのが、明治10年(1877年)創業の人形町「三原堂本店」です。日本橋人形町のシンボルとして街の発展を見守り続け、名物「塩せんべい」を全国区の知名度に押し上げました。一方、池袋三原堂は昭和12年(1937年)に人形町からのれん分けの形で創業。かの文豪・江戸川乱歩が足繁く通い、原稿用紙を模した最中などを考案したことで知られています。池袋でも塩せんべいは看板商品として愛されており、乱歩ゆかりの歴史的背景とともに地元に根付いています。
さらに東京大学の門前に佇む本郷三原堂もまた、独自の「大学最中」や素材にこだわった塩せんべいを提供しています。各店ともに伯方の塩やドイツ産ホワイトクリスタル岩塩を用いるなど、創業時からの良き精神を共有しつつ、地域ごとの文脈に合わせて発展を遂げてきました。現在、ネット上で「東京・日本橋の手土産」として語られる塩せんべいの筆頭は人形町の「三原堂本店」ですが、池袋や本郷の三原堂を巡り、それぞれの個性を食べ比べるのも通ならではの愉しみ方です。