田村正和の役者人生を語る上で欠かせないのが、ニヒルな剣豪を演じた時代劇の金字塔『眠狂四郎』と、日本ドラマ史に残る警部補を演じた『古畑任三郎』である。若き日に魅せた『眠狂四郎』での円月殺法と陰のある静謐な美しさは、父・阪東妻三郎の殺陣の遺伝子を感じさせつつも、正和特有の美学として昇華されていた。
そして三谷幸喜脚本による『古畑任三郎』では、黒のスーツに身を包み、独特の口調で犯人を追い詰めていく知的な刑事を熱演。それまでの二枚目像を鮮やかにセルフパロディ化してみせた。この『古畑任三郎』の撮影現場には、実は兄弟からの温かな助言や見守りがあったとも囁かれている。劇中での圧倒的なセリフ回しと絶妙な間合いは、テレビドラマの可能性を大きく広げた。