『全力坂』のアーカイブにおいて、乙女坂の放送回は常に特別な位置を占めています。起用された歴代ランナーには、当時ブレイク前夜だった注目の若手女優やタレント、アイドルが名を連ねています。
番組の見どころは、スタート直後の軽快な足取りから、中間地点を過ぎて石段が重くのしかかる後半の表情の変化です。ゴール地点で見せる「走り切った瞬間の脱力感」と「吹き出す汗」、そして坂の頂から見下ろす名ナレーション「この坂もまた、実に走りごたえのある坂であった」という締めくくりが、視聴者に強いカタルシスを与えます。
現場取材に基づくと、乙女坂の収録はテイク数を重ねることが極めて難しいため、ランナーには本番一発勝負の集中力が求められます。夕暮れ時や深夜の張り詰めた空気感の中で放たれるリアルな息遣いは、作り込まれたドラマでは味わえないドキュメンタリーとしての迫力を放っています。