ウクライナ空軍屈指の高性能重戦闘機であるSu-27が、なぜコントロールを失い観客の群れに突入してしまったのか。事故直後にウクライナ国家調査委員会および軍事検察が実施したブラックボックスの回収・解析により、技術的欠陥ではなく複数の人為的過失が連鎖した結果であることが判明しました。
機長を務めたウォロディミル・トポナリ(Volodymyr Toponar)中佐と副操縦士のユーリ・エゴロフ(Yuriy Yegorov)中佐は、いずれも2,000時間を超える飛行経験を持つベテランでした。しかし、現場では以下のような致命的な問題が重なっていました。
第一に、フライトプランの直前変更とリハーサル不足です。当初予定されていた飛行経路や演目の変更が直前に通達され、パイロットは変更後の機動をシミュレーターや実機で十分に習熟訓練しないまま本番に臨んでいました。
第二に、機体重量の誤認と低高度機動の過信が挙げられます。当日の機体には予定よりも多くの燃料が搭載されており、機動時の重量バランスと慣性モーメントがパイロットの想定と異なっていました。パイロットは高度数百メートルという超低空で難度の高いアクロバット機動(急降下を伴うローリングや宙返り)を強行した結果、急激な高度低下に対して推力と揚力の回復が間に合わなくなりました。
第三に、地上管制および安全管理の致命的破綻です。最も重大な過失は、アクロバット飛行の航路直下に観客エリアが設定されていた点です。通常の国際航空ショーでは、飛行展示ラインと観客席の間に厳格な安全マージン(緩衝地帯)が設けられますが、スクニリフでは観客の頭上を通過する危険なコース設定が黙認されていました。機内警報が高度危険を知らせたものの、機首を引き起こすスペースは残されておらず、パイロット2名は地表激突のわずか数秒前に射出座席(ベイルアウト)を作動させて脱出、軽傷で生還しました。