インターネット上では「ブッキングドットコムは危険な詐欺プラットフォームなのか」「利用するのは絶対にやめるべきか」といった極端な意見も見受けられます。しかし、事態を冷静に読み解くためには、いくつかの誤解を正しておく必要があります。
最大の誤解は、「フィッシング詐欺メッセージを送ってきたホテルは、悪質な詐欺に加担している」という思い込みです。前述の通り、メッセージが送信されたのはホテル側の管理端末がマルウェアに侵入された結果であり、ホテル自身もまたサイバー攻撃の被害者です。多くのホテルスタッフは、自社のアカウントから顧客へ詐欺メッセージが送られていることに気づいておらず、顧客からの怒りの電話を受けて初めて事態を把握するケースがほとんどです。
さらに、宿泊施設側がブッキングドットコムからの離脱に踏み切れない構造的要因も存在します。日本国内の宿泊業界において、急増する訪日外国人観光客(インバウンド)の集客力という点で、同社の世界的なリーチ力は他を圧倒しています。「システムや送金に不安があっても、同サイトへの掲載を取りやめれば海外からの予約が半減してしまう」という過酷なビジネス上のジレンマが、現場の経営者を縛り付けています。
利用者側としては、「プラットフォームそのものが偽物なのではなく、正規の通信経路が悪用されている」「ホテル側も混乱の渦中にある」という前提を理解し、感情的な対立を避けて客観的な証拠をもとに対処する姿勢が求められます。