人間の目は、カメラのレンズに相当する「角膜・水晶体」と、フィルムに相当する「網膜」で構成されています。角膜から網膜までの奥行きの長さを「眼軸長(がんじくちょう)」と呼びます。正常な視力を持つ「正視」では、光が網膜のちょうど中心(黄斑部)で焦点を結びます。
これに対し、近視は眼軸長が前後に伸びすぎてしまい、網膜より手前でピントが合ってしまう状態です。一方、遠視は「眼軸長が短すぎる」または角膜や水晶体の屈折力が弱いために、光が網膜よりも後ろで焦点を結んでしまう状態を指します。
医学的に極めて重要な事実は、「すべての人間は、基本的に生まれつき遠視である」という点です。生まれたばかりの赤ちゃんの眼軸長は約16〜17ミリ程度しかなく、大人(約24ミリ)よりもはるかに小さな眼球をしています。成長とともに身体が大きくなるのと連動して眼球も前後に伸び、通常は小学校中学年頃にかけて徐々に「正視」へと移行していきます。この自然な発達プロセスを「正視化(エメトロピゼーション)」と呼びます。
子供の遠視における決定的な原因は、この眼軸長の発育が遅れていることや、骨格・眼球の形状に関する遺伝的な素因です。親や近親者に強い遠視や斜視がある場合、子供にも同様の屈折異常が現れる頻度が高いことが臨床疫学データで裏付けられています。決して、育児中のスクリーンタイムの管理不足や家庭環境の怠慢によって生じるものではありません。