教科書に掲載されている鉛直投げ上げの公式を見ると、等加速度直線運動の式に現れる「$+$」がすべて「$-$」に書き換わっています。多くの受験生が「投げ上げのときはマイナスになる公式を別に覚えなければならない」と錯覚しますが、ここにつまずきの根本原因が存在します。
この現象の種明かしは、高校物理の等加速度直線運動の公式という大原則に立ち返ることで完全に説明がつきます。等加速度直線運動の基本式は次の3本です。
① $v = v_0 + at$
② $x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2$
③ $v^2 - v_0^2 = 2ax$
鉛直投げ上げにおいて公式がマイナスに変化するのは、物体を投げ上げる向きである「鉛直上向きを正(プラス)」と定義した座標軸を採用しているからです。地球上の物体には、常に地球の中心に向かう下向きの重力が作用しています。つまり、重力加速度9.8の向きは常に「鉛直下向き」です。
上向きをプラスと決めた座標系において、下向きのベクトル量は当然ながら「マイナス」として扱わなければなりません。したがって、加速度 $a$ に「$-g$」(重力加速度の大きさ $g = 9.8\,\text{m/s}^2$ の負の値)を代入することになります。これが、鉛直投げ上げでマイナスになる理由のすべてです。
物理学における鉛直投げ上げの符号の決め方は、公式によって決められているのではなく、「自分が定めた正の向き」と「物理現象が持つ向き」の相対関係によって数学的に決定されます。この構造さえ把握していれば、公式を丸暗記する必要は一切なくなります。