伝統的な和彫りは、現代のタトゥースタジオで主流となっている機械式マシンとは一線を画す技術体系を持っています。熟練した彫師(ほりし)が一本のノミや竹の棒の先に束ねた針を取り付け、手首のスナップと指先の感覚だけで皮膚にインクを打ち込む「手彫り(てぼり)」は、日本が誇る究極の肉体工芸です。
和彫りの施術は、大きく分けて2つの工程に分かれます。
- 筋彫り(すじぼり):絵柄の輪郭線を肌に刻み込む工程。線のブレが一切許されないため、彫師の基礎技術が最も試される段階。マシンを用いる彫師も増えているが、伝統派は骨格に沿ってフリーハンドで息を合わせながら彫り進める。
- ぼかし(暈し):墨の濃淡(グラデーション)や朱・藍などの彩色を施し、立体感や雲気(みきり)、水しぶきを表現する工程。針を皮膚の正確な深さ(真皮層)に均一に打ち込む手彫りの技術により、年月が経っても色褪せない独特の深みが生み出される。
身体の大部分を覆い尽くす「総身彫り(どんぶり)」や、胸から腕、太ももにかけて施す「九分袖・太もも彫り」を完成させるには、莫大な時間と費用が投じられます。