ネット上の感想ブログやSNSコミュニティでは、一部で事実とは異なる言説が見受けられます。ここでは歴史的・制作的な観点から3つの代表的な誤解を是正します。
誤解1:「トンイ(淑嬪崔氏)と粛宗はずっと相思相愛のラブラブだった」
ドラマでは最後まで深い愛情で結ばれていた二人ですが、正史における粛宗は極めて多情かつ冷酷な専制君主でした。仁顕王后が病没し、チャン・ヒビンを処刑した後の粛宗は、淑嬪崔氏に対しても次第に距離を置くようになり、新たな側室(暎嬪金氏など)や仁元王后を迎えています。晩年に淑嬪崔氏が宮外へ出されたのも、愛の結末というよりは、熾烈な後継者争いから生じる火種を宮廷から排除するための政治的配慮でした。
誤解2:「息子の延礽君(英祖)は母の身分を恥じて隠したがっていた」
「英祖は母が賎民(ムスリ)であることを恥じていた」という言説がありますが、これは正確ではありません。英祖自身、生涯にわたり「賎民の血を引く王」という貴族(両班)勢力からの陰口に苦しめられたのは事実ですが、母・淑嬪崔氏に対する孝心は異常なほど強烈でした。即位後、母の身分回復に執念を燃やし、祠堂を「毓祥宮(ユクサングン)」へと昇格させ、後世にその徳を讃える碑文を自らの手で書き残しています。
誤解3:「チャ・チョンスやソ・ヨンギは実在の英雄である」
トンイを陰から支え続けた大人気キャラクターのチャ・チョンス(ペ・スビン)や、捕盗庁の従事官ソ・ヨンギ(チョン・ジニョン)は、完全なドラマオリジナルの架空人物です。彼らが所属していた賎民組織「剣契」自体は17世紀末の朝鮮に実在した秘密結社ですが、トンイの父がその頭領だったという記録はありません。主人公を過酷な運命に立ち向かわせるための見事な脚色といえます。