命を扱う重厚な社会派ドラマだけに、現場におけるキャスト陣の凄絶な覚悟とエピソードには事欠かない。田宮二郎は撮影当時、役に没入するあまりプライベートでも財前五郎として振る舞い、周囲を圧倒し続けたという。あの壮絶なラストシーンに至るまで、文字通り命を削って役と対峙した現場の空気感は、半世紀近く経った今も語り継がれている。
唐沢寿明版の撮影では、実際の手術手順や器具の扱いを完璧に叩き込むため、膨大な時間を医療指導に費やした。緊迫した手術室の撮影現場では、一瞬の隙も許されないピンと張りつめた空気が流れていたという。脇を固めた西田敏行(東貞蔵役の義父・財前又一)や石坂浩二(東教授役)ら超大物キャスト陣との演技合戦は、まさに真剣勝負そのものだった。