作品を思い出すとき、多くの人の脳裏に蘇るのが「ポコポコ」「プニュ」「ピャッ」といった不思議で愛らしい鳴き声やハミングのような音です。「あの声は有名声優が演じていたのでは?」と長年噂されてきましたが、実際のクレジットをいくら探しても専任の声優名は見当たりません。
実は本作には、日本語をはじめとする具体的な言語のセリフは一切存在しません。登場人物たちの意思疎通は、言葉の手前にある純粋な感情表現――喃語(なんご)のような愛嬌あふれる発声や、ため息、笑い声といったプリミティブな音声のみで構築されています。音響や音楽を手掛けた制作チームとスタッフが、キャラクターの感情の機微に合わせてスタジオで吹き込んだアドリブや加工音がベースになっており、特定の声優を起用しないからこそ、国境や年齢を越えてダイレクトに感情が伝わる仕掛けになっていました。
加えて、音楽家・佐橋俊彦氏によるアコースティックで哀愁漂うアコーディオンや弦楽器のメロディが、言葉のない世界に見事なストーリーテリングをもたらしました。言葉を排したからこそ、視聴者はジャムたちの小さな目の動きや背中の家の揺れから、感情を自由に読み取ることができたのです。