良かれと思って続けているケアが、かえって顔を大きく見せたり老化を加速させたりしている事例は少なくありません。ネット上に流布する情報の中には、医学的に疑問が残るメソッドも混在しています。
代表的な誤解が「強い力で行うマッサージや美顔ローラーの長時間使用」です。「痛いくらい揉んだ方が脂肪が潰れて落ちる」という言説は解剖学的に完全な誤りです。脂肪細胞は外からの揉みほぐしで破壊されることはありません。むしろ過剰な摩擦と圧力は、真皮のコラーゲン繊維や、皮膚と骨を繋ぎ止めている「リガメント(保持靭帯)」を断裂・伸長させ、取り返しのつかない重力性のたるみを招きます。また、摩擦刺激がメラノサイトを活性化させ、頑固な肝斑を誘発するリスクも極めて高いのです。
もう一つの盲点は「硬いものを積極的に噛んで小顔を目指す」という行為です。「咀嚼回数を増やせば顔の筋肉が引き締まる」と信じ、硬いグミやスルメを日常的に噛み続ける人がいますが、これは咬筋を肥大化させ、自らエラを横へ広げているようなものです。現代人に必要なのは咬筋の筋トレではなく、過緊張の緩和と脱力です。上下の奥歯が接触している時間は通常、会話や食事を含めても1日わずか20分程度が正常とされています。無意識に歯を噛み合わせている癖に気づき、舌先を上顎につけて上下の歯を離す「安静空隙」を保つことこそが、最も効果的な予防策となります。