「水族館とは、単に生きものを陳列する場所ではなく、人間が日常を忘れて水という異世界に没入する空間である」。水族館プロデューサーの中村元氏が長年提唱してきたこの理念は、香川の地で極めて純度の高い形で結実している。四国水族館の巨大水槽「綿津見の景」の前に立つと、視界の境界線が溶け、自分自身が海原の底深くに漂っているかのような錯覚を覚える。
静寂と光のグラデーションが織りなすこの空間は、まさに体験型環境エンターテインメントの極致だ。解説パネルの文字を追うのではなく、波の揺らぎや陰影から命のドラマを直感的に感じ取る設計。生きものを取り巻く空気感そのものを演出する展示手法が、世代を問わず心を掴んで離さない。