日本のアニメーション制作業界における空間表現の歴史を語る上で、大友克洋による伝説的作品『AKIRA』の存在を外すことはできない。緻密きわまる超高層ビル群の描写や、地平の彼方まで広がるメガロポリスの迫力は、三点透視図法を緻密に計算し尽くした背景美術の金字塔だ。圧倒的な密度の線画と正確な遠近法が組み合わさることで、観客はスクリーンの奥に存在する都市の重圧感を身体的に体感した。
一方で、スタジオジブリが手掛ける数々の名作もまた、背景美術における視覚的ダイナミズムを追求し続けてきた。自然風景やノスタルジックな街並みの中に自然な高低差を生み出す際、緻密な幾何学としての三点透視図法を裏地に敷きつつ、空気感や光の反射を重ね合わせる手法が用いられる。直線的な建築物だけでなく、入り組んだ路地や巨木の茂る森にまで遠近法の思想を滑り込ませることで、ジブリ作品特有の「生きている世界」が立ち現れる。