朝、コーヒー1杯を頼むだけで、こんがり焼かれたバタートーストにゆで卵、店によってはサラダやヨーグルト、さらには茶碗蒸しまで運ばれてくる――。他県民が思わず目を丸くする名古屋モーニングサービスの真相には、この地域ならではの産業構造と人のつながりが関係しています。
名古屋喫茶店発祥の歴史を紐解くと、大きな契機となったのは高度経済成長期に繊維産業で活況を呈した近郊の一宮市周辺です。機織り機の音が響き渡る工場内では落ち着いた商談が難しく、商人たちはこぞって近所の喫茶店を打ち合わせの場として活用しました。店主たちが「朝早くから来てくれる常連客に喜んでもらいたい」と、ピーナッツやゆで卵をサービスしたのがモーニングの原型とされています。
その後、過密する競合店との差別化合戦が勃発。サービス精神旺盛な中京圏の気質と相まって、「より豪華に、よりお得に」とおまけの品数やクオリティを競い合う文化へと昇華していきました。自宅のリビング代わりに新聞を広げて談笑する地元客の日常が、この分厚い喫茶文化を育て上げたのです。