アルバム『YANKEE』収録曲の中でも、「メランコリーキッチン」は初期のボカロP(ハチ)時代からメジャーシーンのトップランナーへと飛翔する過渡期の鋭利なポップセンスが凝縮されたナンバーです。BPM約128のアップテンポで駆け抜けるドラムとベースに対し、ギターは非常にファンキーかつリズミカルなアプローチをとっています。
本作のコード進行を音楽理論の観点から紐解くと、基軸となっているのは「IVmaj7 → V7 → IIIm7 → VIm7」という、いわゆるブラックミュージック由来の循環進行です。原曲の実音で表記すると以下の通りになります。
【サビの原曲実音進行】:Amaj7 → B7 → G#m7 → C#m7
このコード進行は、メジャーの明るさとマイナーの切なさが目まぐるしく循環する構造を持っています。米津玄師特有の「失われた日常の記憶」を回想する歌詞と、ステップを踏むような軽快なリズムが見事なコントラストを描き出すのは、まさにこの洗練されたコード配置の賜物です。