SNSや相談コミュニティでは、熱狂的なお迎えから一転して「飼ったことを後悔している」「精神的に追い詰められた」という悲痛な声が散見されます。愛犬への愛情はあるものの、生活が一変したことによる疲弊が原因です。
実際に寄せられた一次証言を検証すると、後悔の理由は3つの現実に集約されます。
「家の中を歩くだけで神経がすり減る」という生活空間の緊張感です。都内在住の30代女性は手記でこう明かしています。
「足元にいるのに気づかず軽く蹴ってしまっただけでギャンと叫んで脚を引きずり、救急病院へ走りました。診断は骨のひび。それ以来、部屋を歩くときはすり足になり、夜中にトイレに起きるのすら恐怖です。小さな子供がいる家庭では絶対に飼えないと痛感しました」
莫大な医療費負担とペット保険の適用制限です。迎えて半年で膝蓋骨脱臼と低血糖症を発症し、生涯の通院を余儀なくされた飼い主のケースでは、年間医療費が50万〜80万円に達することも珍しくありません。先天性奇形や小型化由来の遺伝性疾患はペット保険の補償対象外とされるケースもあり、家計を激しく圧迫します。
そして、「巨大化」による心理的葛藤とブリーダーへの不信感です。50万円以上のプレミアム価格で「成犬になっても1.5kg」と太鼓判を押されたにもかかわらず、1歳で3.5kgに達した飼い主は、「犬自体は愛しているが、騙されたという悔しさと、小さく留めてあげられなかったという自責の念で自己嫌悪に陥る」と吐露しています。
社会学および消費心理学の視点からこの現象を解剖すると、高度経済成長期以降の日本社会で繰り返されてきた「愛玩対象の小型化・モノ化(物象化)」という消費病理が浮かび上がります。「バッグに入れて持ち歩けるアクセサリー感覚」や「SNSで映えるミニチュアへの執着」は、生きている動物を記号として消費する心理と地続きです。生き物である以上、成長し、排泄し、病気にもなるという厳然たる生命のリアリティに向き合えないまま衝動買いした結果、理想と現実のギャップが「後悔」という形で噴出しているのです。