Web上や民間療法の中には、医学的根拠を欠いたまま拡散されている危険な誤解が蔓延しています。誤ったセルフケアは症状を改善しないばかりか、取り返しのつかない重症化を招くリスクを孕んでいます。
最大の誤解は、「足の甲がむくんでいるときは水分を控えたほうがいい」という言説です。透析治療中や重篤な心不全で医師から厳格な水分制限を指示されている場合を除き、健常者や軽度循環不全の患者が水分摂取を減らすのは極めて危険です。水分が不足すると血液の粘稠度が増してドロドロになり、かえって静脈血栓の形成リスクを跳ね上げます。体内の塩分(ナトリウム)を尿として適切に排出させるためにも、常温の水を1日1.2〜1.5リットル程度、こまめに補給するのが生理学的な正解です。
次に横行している誤解が、「むくみは強い力で揉みほぐせば散る」という乱暴なマッサージ信仰です。足の甲の皮膚直下を通る初期毛細リンパ管は、内皮細胞が瓦状に重なり合った極めて繊細で壊れやすい微細構造をしています。ここを指圧のように強く押し込んだり、硬い美顔ローラーなどで激しく擦ったりすると、毛細リンパ管の内皮が開口不全を起こして破壊され、かえって組織液の回収が完全にストップします。さらに、もし皮下に血栓が存在していた場合、強いマッサージが血栓を物理的に剥がし、肺塞栓を誘発するトリガーになりかねません。
また、「足枕を使って足を高く上げればどんなむくみも解決する」という過信も禁物です。下肢静脈瘤や軽度の筋疲労には一定の効果があるものの、重度のうっ血性心不全を抱えている患者が自己判断で下肢を心臓より高く挙上すると、下半身から大量の血液が一気に心臓へと逆流し、心臓の許容量を超えて急性肺水腫(肺に水が溜まり窒息状態に陥る病態)を引き起こす恐れがあります。持病がある場合の体位管理には主治医の指導が不可欠です。