Q1:術後の安静時間や体位制限について、施設によって「完全平臥位2時間」や「制限なし」など指示が分かれているのはなぜですか?
A1:使用する穿刺針の進化と、エビデンスの更新状況に差があるためです。現在主流の極細ペンシルポイント針(25G〜27G)は硬膜線維を切断せず押し広げて刺入するため、髄液漏出による頭痛リスクが激減しています。そのため近年のガイドラインでは過度な平臥位強制の意義は薄いとされていますが、従来通りの太針を使用している場合や、血行動態の安定化を優先して一定時間のベッド上安静をプロトコル化している医療機関も依然として存在します。自施設の採用針と医師の治療方針を確認することが大切です。
Q2:術後のデルマトーム評価で知覚低下が「Th4(乳頭線)」に達していた場合、看護師は何を最優先すべきですか?
A2:最優先すべきは循環・呼吸器破綻への即座の警戒と麻酔科医への緊急コールです。Th4レベルは心臓交感神経が遮断される境界線であり、重篤な徐脈と低血圧、肋間筋麻痺による呼吸困難が急速に進行するリスクがあります。直ちにバイタルサインを再測定し、高流量酸素投与の準備、ベッドの頭側を下げすぎない(麻酔薬がさらに頭側へ広がるのを防ぐ)ポジショニング、エフェドリンやアトロピン等の緊急薬剤のシリンジ準備を並行して進めてください。
Q3:脊椎麻酔後頭痛(PDPH)を発症してしまった患者に対して、病棟でできる有効な初期看護ケアは何ですか?
A3:まずは患者を水平臥位にし、脳脊髄液圧の低下に伴う牽引痛を和らげることが最優先です。その上で、経口または点滴による積極的な水分補給(補液により髄液産生を促進する)を行い、NSAIDsやアセトアミノフェン、カフェイン製剤の投与を医師と連携して進めます。通常は数日から1週間程度で自然閉鎖しますが、起き上がれないほどの激痛が続く場合は、硬膜外腔に自己血を注入して穿刺孔を塞ぐ「硬膜外自家血パッチ(EBP)」の適応となるため、痛みの重症度スケールを経時的に記録してください。