長月には、風景や年中行事に基づいた情緒あふれる別名(異称)が数多く存在します。これらを知ることで、当時の人々がどのような視点で秋を見つめていたかが浮き彫りになります。
代表的な別名の一つが「菊月(きくづき)」や「菊咲月(きくざきづき)」です。旧暦9月9日は五節句の一つである「重陽の節句(ちょうようのせっく)」にあたり、菊の花を浮かべた菊酒を酌み交わして不老長寿を祈る風習がありました。さらに、木々の葉が鮮やかに色づく様子から「紅葉月(もみじづき)」、夜の冷気で濃い露が降りることから「露隠月(つゆごもりづき)」といった雅やかな呼び名も残されています。
また、行事面で見逃せないのが旧暦8月15日の「十五夜」に続く「十三夜(後の月)」です。旧暦9月13日に行われる十三夜の月見は日本固有の風習とされ、十五夜の月だけを見て十三夜を見ないことを「片見月(かたみづき)」と呼び、縁起が悪いとして両方の月を愛でる習慣が大切にされてきました。