南極の生態系は驚くほどシンプルで、それゆえに脆い。その中核をなすのが、海洋全体の生命を支える超重要種「ナンキョクオキアミ」だ。ペンギンたちの主食であるオキアミは、海氷の裏側に繁殖する藻類(アイス・アルジー)を食べて育つ。つまり、氷の消失はオキアミの資源量激減に直結する。
オキアミの減少はペンギンを餓死させるだけに留まらない。それを捕食するヒゲクジラ類やアザラシ、さらには南半球の大規模な漁業資源にまで壊滅的な打撃を及ぼしている。生態系のトッププレデターであるペンギンが姿を消すことは、豊かな南極海が生命の存在しない「海の砂漠」へと変貌するカウントダウンを意味する。