ランディーズドーナツを語る上で欠かせないのが、ロサンゼルス国際空港(LAX)近くのイングルウッドに位置するロサンゼルス本店の屋根に鎮座する、巨大なドーナツ型の造形物です。この巨大看板の理由は、創業期である1952年当時のアメリカ特有の都市文化に深く根ざしています。
第二次世界大戦後の南カリフォルニアではモータリゼーション(車社会化)が急速に進行し、ドライバーが高速で移動しながらでも一目で何の店か認識できる「プログラム建築(宣伝物をそのまま建物の外観にする建築手法)」が流行しました。もともとは「Big Donut Drive-In」というチェーンの1店舗として設計されたこの直径約10メートル(32フィート)のドーナツオブジェは、1976年に独立して「Randy's Donuts」となって以降もそのまま受け継がれ、街の歴史的ランドマークへと昇華したのです。
そしてこの場所を一躍、世界規模のポップカルチャーの殿堂に押し上げたのが、2010年公開のマーベル映画『アイアンマン2』です。アイアンマン ロケ地として、ロバート・ダウニー・Jr演じるトニー・スタークがパワードスーツを身にまとったまま巨大ドーナツの穴の中に腰掛け、箱から取り出したドーナツをのんびり頬張るシーンは映画史に残る名場面となりました。監督のジョン・ファヴローが「ロサンゼルスの最も象徴的な風景のひとつ」として選んだこのロケーションは、今なお世界中からMCUファンが巡礼に訪れる絶対的な聖地として君臨しています。