和菓子にごぼうという意表を突く組み合わせの背景には、平安時代から続く宮中行事「歯固め(はがため)の儀」が存在します。歯固めの儀とは、正月三が日に大根、猪肉、押鮎(塩漬けにした鮎)などの硬いものを食べ、歯を丈夫にして無病息災と長寿を願う儀礼です。
かつて宮中では、丸い餅の上に小豆の渋で赤く染めた菱形の餅を重ね、その上に大根や猪肉、押し鮎などをのせて雑煮仕立てにして食していました。時代が下るにつれてこの儀式が簡略化され、生魚である鮎の代わりに形が似ているごぼうを甘く煮て挟むスタイルへと形を変えていったのが、現代の花びら餅におけるごぼうの決定的な理由です。
ごぼうは大地にしっかりと根を張る野菜であることから、「家の土台が揺るぎなく安定する」「延命長寿」を意味する縁起物としても重宝されてきました。素朴な根菜の風味と蜜煮の甘みが、新春の寿ぎを象徴する役割を果たしています。