ネット上の掲示板やSNSで囁かれるボディステッチ 痛くない理由の根拠とされているのが、「皮膚の最外層である表皮には神経が通っていない」という医学的事実です。人体の皮膚は外側から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造で成り立っています。確かに、角質層を含む表皮の最浅部には血管や痛覚を感知する知覚神経終末が存在しないため、理論上はその層だけをすくい取れば痛みを感じず、血も出ません。
ここに致命的な誤解と落とし穴が存在します。人間の表皮の厚みは部位によって異なるものの、わずか0.1〜0.2ミリ程度(ラップフィルム数枚分)しかありません。一方で、家庭科などで使われる一般的な縫い針の太さは約0.5〜0.8ミリ、刺繍針に至っては1ミリ前後に達します。針自体の太さが表皮の厚みを大幅に超えている以上、針先を皮膚に刺した時点で表皮を突き破り、神経と毛細血管が網の目のように張り巡らされた「真皮層」へ到達してしまうのが必然です。
皮膚科学会関係者や臨床現場の医師が警鐘を鳴らす通り、肉眼と素人の手先で0.1ミリの表皮だけを縫い進める神業は不可能です。「痛くないはずだったのに刺した瞬間に激痛が走った」「糸を通したら血が出る失敗に見舞われた」という告白が後を絶たないのは、解剖学的に当然の帰結といえます。