画面が固まり動かないからといって、いきなり電源ボタンを長押しするのは、走行中の自動車のギアをいきなりバックに入れる行為に等しい危険を孕んでいます。なぜ長押しがそれほどまでに忌避されるのか、その理由はストレージの物理構造とファイルシステムの仕組みにあります。
PC内部では、OSが常にログファイルや仮想メモリの書き込み処理(I/O処理)をバックグラウンドで実行しています。この書き込み処理の最中に電源ボタンを4秒以上押し続けて電気供給を断つと、ファイルの整合性を管理するインデックス情報(MFTやメタデータ)が破壊され、いわゆる論理障害が発生します。これこそが、再起動後にOSが立ち上がらなくなる主要因です。
さらにハードウェアの観点でも深刻なダメージが残ります。回転する磁気ディスク上でヘッドが微小な隙間を保って浮遊している旧来のPCでは、急な給電停止によりヘッドがディスク表面に衝突するハードディスク故障リスクが常に付きまといます。近年の主流であるNVMe SSDであっても油断は禁物です。キャッシュメモリからNANDフラッシュへの書き込みが完了する前に電力が途絶えると、SSD内部のコントローラチップが論理不整合を起こし、ストレージそのものが文鎮化する重大障害に直結します。
安全な強制終了と危険な強制終了の違い、およびリスクレベルをまとめた以下の比較表を確認し、現在の状況でどの手段を選択すべきか冷静に見極めてください。
不測の事態においてデータ消失防止とバックアップが機能していなければ、失われたデータを取り戻すために専門業者へ数十万円の復旧費用を支払う事態に陥りかねません。電源ボタン長押しは、あらゆるソフトウェア的介入を試した後の「最終防衛ライン」であるという共通認識を持つことが肝要です。