本作の物語を立体的に駆動させているのは、ハリーを取り巻く強烈な個性を持ったサブキャラクターたちです。彼らの行動にはすべて、表層的なギャグやトラブルの裏に切実な背景が存在していました。
屋敷しもべ妖精ドビーの過激な行動理由
物語冒頭からダーズリー家へ押し掛け、手紙を隠し、ケーキを落とし、果てはホグワーツ特急の9と4分の3番線の改札口を封印してハリーを骨折に追い込むなど、常軌を逸した妨害を繰り返したドビー。一見すると危険極まりない迷惑行為の連続ですが、ドビーの行動理由は「ハリー・ポッターの命を何としても守るため」という純粋な崇拝と忠誠心でした。
当時マルフォイ家に仕えていたドビーは、主人であるルシウス・マルフォイが闇の道具(リドルの日記)をホグワーツに持ち込み、マグル生まれの生徒を粛清する陰謀を企てている密談を盗み聞きしていました。しもべ妖精の掟により主人の秘密を口外することは禁じられており、違反すれば自傷行為による自己処罰を強いられる過酷な呪縛のなかで、ドビーはハリーを「学校に行かせないことで死の危険から遠ざけよう」と必死に画策していたのです。最後にハリーの機転によって靴下を手渡され、自由の身となった瞬間のカタルシスは、シリーズ屈指の名場面として語り継がれています。
嘆きのマートルの死因と50年前の真相
2階の女子トイレに棲みつき、常にすすり泣いているゴースト「嘆きのマートル(本名:マートル・エリザベス・ウォーレン)」。彼女の存在こそが、秘密の部屋への入り口を特定する決定的な鍵でした。
50年前、マグル生まれであったマートルは同級生から眼鏡の容姿をからかわれ、個室のトイレに閉じこもって泣いていました。そのとき、誰かがトイレに入ってきて聞き覚えのない奇妙な言語(蛇語)を話したため、怒ってドアを開けた瞬間、彼女の視界に飛び込んできたのは洗面台の前にいたバジリスクの巨大な黄色い眼でした。マートルは何が起きたのか理解する間もなく即死し、そのまま未練からゴーストとなってトイレに留まり続けていたのです。パイプを通って城内を徘徊するバジリスクの移動経路と、女子トイレの蛇の彫刻が施された蛇口が秘密の部屋の昇降口である事実をハリーが見抜く上で、彼女の証言は不可欠でした。