伏見桃山城を訪れた旅行者が直面する最大の疑問が、「立派な大天守・小天守が建っているのに、なぜ中に入れないのか」という点です。現地のエントランスには立ち入りを制限する案内板が設置されており、天守内部への扉は固く閉ざされています。
内部公開が完全に停止された直接の契機は、2003年1月31日の遊園地「伏見桃山城キャッスルランド」閉園でした。開園当初は内部にエレベーターが設置され、秀吉ゆかりの資料展示や展望フロアが観光の目玉となっていましたが、施設の老朽化と耐震基準の問題から、一般開放が断念されるに至りました。
決定打となったのは、建築基準法に基づく耐震診断の結果、震度6強以上の揺れで倒壊・崩壊の危険性があると判定されたことです。現在の天守閣は1964年(昭和39年)に建設された旧耐震基準の鉄筋コンクリート造(RC造)建築であり、現代の公共施設として求められる安全水準をクリアしていません。
京都市の試算や関係機関の調査によると、大天守・小天守を安全に公開するための耐震補強・大規模改修には数十億円規模の財政負担が必要とされています。財政健全化を進める自治体にとって、歴史的建造物(文化財)としての法指定を受けていない昭和の観光用建築物に対し、巨額の公金を単独投入することは極めて困難なのが実情です。そのため、安全確保を最優先として「外観見学のみ許可、内部は完全非公開」という管理方針が維持されています。