ネット検索やSNSのショート動画で定期的にバズを生むのが、「ワセリンを塗って寝るだけでまつ毛が劇的に伸びる」という裏ワザです。薬局で数百円で手に入る手軽さから、中高生を中心に信じ込まれやすいこの手法ですが、結論から言えばワセリン自体にまつ毛を伸ばす育毛効果は一切ありません。
ワセリンの主成分は石油から精製された高純度の炭化水素であり、その役割は皮膚表面に油膜を張って水分の蒸発を防ぐ「保護」に限定されます。毛母細胞を活性化させたり、毛周期の成長期を延長させたりする薬理作用は持ち合わせていません。ワセリンを塗ることで毛先が油分で束になり、ツヤが出て太く見えた視覚的錯覚が、「伸びた」という誤認を生み出しているのが実態です。
さらに見過ごせないのが、眼周囲へのワセリン塗布に伴う衛生上の重大なリスクです。目のキワには涙の蒸発を防ぐ脂質を分泌する「マイボーム腺」が存在します。高粘度のワセリンをまつ毛の生え際に塗布すると、この分泌口を塞いでしまい、マイボーム腺梗塞やものもらい(麦粒腫・霰粒腫)を誘発する可能性が眼科専門医から強く指摘されています。安易なネットの裏ワザに飛びつくことは、育毛どころか眼球周囲の健康被害に直結することを認識しなければなりません。